■はんだ付けはできますか?
こんにちは、ガマンです。
今回は、はんだ付けの基礎知識、使う道具、手順、
はんだ付けに失敗したときの修正方法などをご紹介します。
・失敗したはんだ付けを修正する方法が知りたい
・どんな道具をそろえたらいいのか知りたい
はんだ付けってこんなものなのか、
こうやってやればいいんだなとイメージを膨らませてもらって、
たくさん練習してみていただければと思います。
私は以前、世界中で有名なはんだごてメーカの
白光さんが開催している実践セミナーを受けたことがあります。
セミナーで基礎知識やはんだ付けの手順などを習いました。
そのセミナーに基づいて私なりにまとめました。
用語はメーカによって呼び方が異なったりするものもあるのでご容赦ください。
また全体の図版は白光さんのセミナー、Webサイトの図版を参考させていただきました。
■はんだ付けの基礎知識
●はんだ付けって何?
そもそもはんだ付けとは、ざっくりいうと金属と金属をくっつけることで、
溶接の一種に分類されます。
基板のパッドやランドに、はんだとかソルダと呼ばれる化学材料で、
電子部品をくっつけることを言います。
▲はんだ
はんだの多くは、鉛(なまり)とスズでできています。
糸のような形状のはんだの中には、実はフラックスという薬品が入っています。
▲フラックス
フラックスとは、松の木の樹液である松脂(まつやに)とアルコールでできた薬品です。
このフラックス、3つの重要な役割があります。
・役割1
基板のパッドやランド、電子部品のリード部分の酸化膜を科学的に除去する役割
・役割2
はんだ部分が酸化しないように防止する役割
・役割3
溶融(ようゆう)、つまり熱によって溶けたはんだの表面張力を低下させて、
はんだの流動性を良くする役割
●なんで金属同士がくっつくの?
そもそも金属同士がどうしてくっつくかというと、
はんだは、接合部分の金属表面に、
はんだと接合する金属の合金層を作ります。
くっつける基板のランドやパッドが銅のとき、
スズや銅が混じりあった合金の層、ができます。
合金層を作る際に大事になってくるのがフラックスです。
フラックスが、金属の表面に付着した酸化膜などを取り除いてくれるので、
くっつけやすくなります。
●はんだが溶ける温度は?
はんだが溶ける温度のことを融点(ゆうてん)と言います。
はんだは3つの状態が存在します。
▲共晶はんだ
スズが63%、鉛が37%のはんだは「共晶はんだ」と呼ばれ、
183℃で液体から固体に変わります。
半溶融(はんようゆう)の状態がほとんどなく、
瞬時に液体、個体と変化します。
はんだ付けした直後に部品に触ってしまった場合もずれる心配が少なく、
初心者の方でも扱いやすいと言われています。
実際に市販されている共晶はんだは
大体スズ60%、鉛40%くらいのものも多いようです。
はんだごてメーカの白光さんもホームページ上で、
初心者の方は、この共晶はんだを買うことをお勧めしています。
▲鉛フリーはんだ
メーカのエンジニアの方などは、
環境問題に配慮した成分比率「すず99%/ 銀0.3%/ 銅0.7%」の
「鉛フリーはんだ」というもの使っている場合があります。
鉛フリーはんだは共晶はんだと比べて、下記のような特徴があります。
・融点が217℃~227℃と高い
・はんだの拡がりが悪い
●はんだ付けの最適温度
電子部品をくっつけるとき、
設定温度は、370℃(±20℃)が標準的だそうですが、
温度回復特性がよいはんだごては、
できるだけ部品に温度負荷をかけないように320℃~350℃にするとよいそうです。
FX600については配線や電子部品のはんだ付けには320℃~420が推奨されています。
一般的にはんだ付けをするときの最適温度は、下記のように言われています。
式2 はんだ付け部分の最適温度 + 100℃ = はんだごての最適な温度
(または、はんだの融点 + 10℃~部品の耐熱温度)
(例)はんだの融点が180℃
180℃ + 50℃ = 230℃ ←理想的なはんだ付け部分の温度
※この温度は、180℃+10℃=190℃~部品の耐熱である必要があります。
230℃ + 100℃ = 330℃ ←はんだごての最適な温度
鉛フリーはんだの融点は共晶はんだに比べて約30℃高いので、
式2をあてはめると、はんだごての最適な温度は約360℃です。
■はんだ付けの道具
はんだ付けをするとき、いくつか道具が必要になります。
道具2 はんだごて置き&こて先クリーナー
道具3 はんだ
道具4 フラックス
道具5 洗浄剤&キムワイプ
道具6 はんだ吸い取り線orはんだ吸い取り機器
※ほかにも、耐熱性のしきもの、手袋、安全メガネがあれば便利です。
●道具1 はんだごて
はんだごては、はんだを溶かすために必要です。
はんだは溶ける温度が決まっているので、
選ぶときは温度のことを考えて決めましょう。
はんだごてはヒーターの構造が異なった、
セラミックヒータータイプと、
ニクロムヒータータイプがあります。
▲はんだごてのタイプ①ニクロムヒータータイプ
ニクロムヒータータイプは、比較的安価です。
構造は、ニクロム線の太さや長さを変えることによって
温める温度を変えているそうです。
ニクロムヒーターのタイプを購入するときは、
消費電力を見て選ぶといいと思います。
白光さんでは20W、30W、40W、60Wのものがあり、
抵抗やコンデンサ、トランジスタといった電子部品には
20Wか30Wのものが推進されています。
白光さんのREDシリーズの20Wのものは、
300秒温めると340℃に達するので
はんだ付けするときは300秒温めるとよさそうです。
Amazon.co.jp 白光 半田ゴテ レッド 30W No.501
▲はんだごてのタイプ②セラミックヒータータイプ
セラミックヒーターのタイプは、
構造的に、温度の変化によって抵抗値が変化するので、
温度が低いときは電流が大きくなり、
ニクロムヒーターよりもこて先の温度が早く上昇します。
さらにセラミックヒーターのタイプは
温度の調整が自分でできるものと、できないものがあります。
使うはんだに合わせてはんだごての温度調整ができれば、
部品や基板を熱で痛めることが少なくなります。
白光さんのはんだごてですと、
FX600が簡単に温度調整ができるのでいいかもしれません。
アマゾンでも買えます。
Amazon.co.jp 白光 【Amazon.co.jp限定】 ダイヤル式温度制御はんだこて 基盤が見える クリアタイプ FX600A No.Y163
また温度調整ができないセラミックヒータータイプのものだと、
白光さんのDASHシリーズがあります。
15Wで90秒→340℃に達するので、
ニクロムヒーターのタイプの20Wより、約3倍速く温まります。
▲はんだごての部品:こて先
はんだごては先っちょのこて先の形が変えられるタイプと、
変えられないものがあります。
こて先は、はんだ付けする基板や部品に、
熱を効率よく伝えられる形状を選ぶとよさそうです。
ぜひいろんなものを試してみてください。
標準で付属していることが多い形がB型です。
形状に方向性がないので、
大きな面から小さな面まで幅広く対応できます。
挿入部品のはんだ付けから、表面実装部品のはんだ付けまで使用できます。
B型の先端を細くしているタイプです。
狭い部分やチップ部品、表面実装型の電子部品に向いています。
円柱または円錐の先端をななめにカットした形状です。
面の大きさは、端子の太さやパターンの広さに合わせて選ぶことができます。
スイッチ、端子などの電気部品に向いています。
先端形状がドライバのマイナス型のようになっているので、
はんだ付けできる面が広いです.
チップ部品のはんだ付けなどに向いています。
* * *
はんだごては、
ご予算の関係や何をはんだ付けしたいのかによって選び方が変わってくるので、
消費電力やヒータタイプ、こて先が変更できるかなどを
吟味して選んでみてください。
●道具2 はんだごて置き&こて先クリーナー
安全のために、はんだごてを置いておく道具があります。
はんだごて置きには、スポンジやワイヤー式の
クリーナーが付いているものがあります。
Amazon.co.jp 白光(HAKKO) こて台 633-01
はんだ付け中に余分なはんだがこて先についたとき、
スポンジやワイヤーで拭き取ります。
スポンジは水を含ませてぬぐうのですが、
こて先の温度が下がるので、
温度を下げないようにワイヤータイプのものが推奨されています。
●道具3 はんだ
はんだは、はんだ付けの対象物の大きさに合わせて
線の太さ(線径)を選択します。
白光さんがおすすめする太さがこちらです。
目安にしてみてください。
●道具4 フラックス
フラックスは松脂とアルコールでできた化学薬品です。
はんだがきれいに付くように、
酸化を除去、防止するためにはんだ付けする部分に塗ります。
Amazon.co.jp 白光 ハッコーFS-200 フラックス 20ML FS20001
使いきりができるような20mlのボトル入りのものがあります。
ふたを開けるとついているハケで、フラックスを塗布します。
鉛フリーのはんだを使う場合は、
鉛フリーはんだに対応した電子部品用のフラックスを使ってください。
ペンタイプのフラックスもあります。
https://www.hakko.com/japan/products/hakko_fs210_fs211.html
●道具5 洗浄剤&キムワイプ
基板に塗布したフラックスをふき取るために、
フラックス洗浄剤とかフラックスクリーナーと呼ばれる薬品と、
キムワイプ(S-200)と呼ばれる拭き取り紙を使います。
スプレータイプのものや、ハケで塗るタイプのものが市販されています。
https://www.hakko.com/japan/products/hakko_017.html
白光さんの講習会を受けたときは、
キムワイプに無水エタノールをしみこませて、
基板に付いたフラックスをふき取っていました。
このようなもので代用してもよいかと思います。
無水エタノールは、ボトルのままだと出しすぎてしまう可能性があるので、
100円ショップに売っているようなアルコール対応の
小分けの容器に入れて使うなどすると使いやすそうです。
●道具6 はんだ吸い取り線
はんだ付けに失敗した場合に、はんだを吸い取る線材があります。
細い銅線を編み込んであって、
この編み込み線に粉上のフラックスが付着しています。
失敗した箇所にあてて、はんだごてであっためて
はんだを吸い取り線にしみこませて取ります。
線径、線の太さは
端子の幅に対して細すぎるときれいに除去できないので、
はんだ付け部分の大きさにあわせて選んでください。
■はんだ付けの手順
はんだ付けの手順を1つずつ説明していきます。
※原画は尊敬する福岡先生にいただきました。誠にありがとうございます!
▲手順1 はんだごてを温める
電源を入れて、こて先を温めます。
安全のためこて台に置いて待ちます。
▲手順2 フラックスを基板に塗布する
はんだごてを持つときは、
金属の部分が約300℃くらいにるので、
絶対に触らないように気を付けてください。
ペンを持つようにかまえてみてください。
▲手順3 こて先に少しだけはんだを付ける
▲手順4 こて先をクリーニングする
▲手順5 接合部を温める
▲手順6 はんだを送る
▲手順7 まずはんだを離す
▲手順8 はんだごてを離す
▲手順9 はんだが基板の裏まで上がっているか確認する
▲手順10 洗浄剤でフラックスを洗浄する
▲手順11 はんだ付けを全部終えたらこて先をクリーニングする
▲手順12 熱が完全に冷めるまではんだごて置きにおいておく
END
■はんだ付けの良し悪し
●良いはんだ付け
理想的なはんだ付けがされた状態とは、
富士山のすそ野のように、
なめらかな傾斜がある状態が理想といわれています。
※白光さんの理想のはんだ付け状態
出典元:https://handa-craft.hakko.com/support/good-soldering.html
理想的なはんだ付けをするには、
適切な時間だけ加熱して、
適量のはんだを送るようにします。
▲良いはんだ付けのコツ
大きな金属と小さな金属では、小さな金属のほうが早く加熱されます。
はんだは、温度が高いほうに流れる性質を持っているので、
この性質を利用してはんだを送るように、
はんだごてをあてるようにしてみてください。
難しいかもしれませんが、練習あるのみです。
●悪いはんだ付け
悪いはんだ付けの状態は、下記のものがあげられます。
もしこの状態になっていたら修正しましょう。
悪い状態1 はんだの量が少ない状態
悪い状態2 はんだの量が多すぎる状態
悪い状態3 鬼の角や鍾乳洞のツララがはえている状態
悪い状態4 隣の端子とくっついてしまう、ブリッジになっている状態
悪い状態5 熱を加えすぎてオーバーヒートしてしまった状態
悪い状態6 ランドやパッドがはがれている状態
悪い状態7 ヤニ付けになって焦げている状態
悪い状態8 クラック、ひび割れている状態
※白光さんの悪いはんだ付けの例
出典元:https://www.hakko.com/japan/namari/pages/index.html
■はんだ付けに失敗したら直す
はんだ付けに失敗してしまったら修正します。
修正方法はいくつか存在します。
●方法1 はんだ吸い取り線
はんだ吸い取り線の線、別名ウイックを使います。
ウイックは細い銅線を編み込んであって、
粉上のフラックスが付着しています。
▲修正手順1 こて先にはんだを付ける
▲修正手順2 はんだを吸い取る
取り外したい部品のはんだ部分にウイックを乗せて、
その上からこて先ねかせた状態で接触面を多くあてて、はんだを溶かします。
ウイックがはんだを吸い取ったら、
こて先とウイックを同時に、同じ方向に離します。
▲修正手順3 はんだを吸い取った部分はニッパでななめ45度にカットする
●方法2 スッポン
スッポンと呼ばれるばね式ポンプ機器を使う場合は、
吸い取りたいはんだを温めたら、
スッポンの口をその部分にあててボタンを押します。
すると溶けたはんだが吸い取られます。
Amazon.co.jp 白光(HAKKO) 簡易はんだ吸取器 ハッコースッポン 20G
注意点としては、
片面基板はランドやパッドのパターン部分が弱いので、
熱で銅はくをはがさないように注意しましょう。
うまく吸い取れれば、両面基板はスルーホールの穴に光が貫通します。
■白光さんの実践セミナー
白光さんが開催している実践セミナー「ソルダリングスクール」は、
温度の調節やQFP,SOPのリワーク方法、
抵抗を折り曲げる角度からカットするときの角度と方向などを、
細かく教えてくださるので、ぜひ受講することをお勧めします。
特に流しはんだと呼ばれる、QFPを基板に付ける技を身に着けられます。
流しはんだが身に付けば、表面実装はもう大丈夫といっていいのではないでしょうか。
先生がはんだ付けした箇所をその場で検査してくれて、
もっとフラックスを多く塗ったほうがいいですね、とか、
はんだ少し盛りすぎなので減らしてみましょうなど、
具体的なアドバイスをくださります。
※現在は変わっているかもしれません。
私は東京の神田駅近くにある東京営業所で受講しました。
白光さんの実践セミナーWebサイト
https://www.hakko.com/japan/school/school.html#school
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それではまた次回。
またね!